初期症状は食道違和感等の不定愁訴がほとんどです。また比較的周囲に浸潤しやすく進行が早いため発見が遅れる傾向があります。進行すると食物がつかえるなど、いわゆる嚥下(えんげ)障害を訴えて受診される方が多くなります。進行すると水ものよりも御飯など固形食がつかえる方が多くなります。ご飯が胸につかえお茶で流しこまないと胃に入らないと訴えられる方もいます。比較的高齢者に多く、50歳代以降は加齢とともに急激に増加し、ピ-クは60歳代と言われていますが、70歳代でもよく見られます。喫煙や飲酒、極端に熱いものや辛い物による食道の刺激などが誘因の一つとされていて、そのため女性よりも男性に4~5倍多いとされています。
食道癌は内視鏡検査で容易に診断がつきますが、5年生存率(5年間生きられる確率)が全体で15~30%とされ、比較的予後の悪い病気の一つとされています。症状が出る前に、早期に発見することが何よりも重要です。
食道癌の治療は、内視鏡的手術を含めた手術療法、化学療法、放射線療法などを組み合わせた集約的治療を要することがほとんどです。当院で食道癌と診断された際は、関連施設である順天堂大学医学部附属順天堂醫院(食道癌の治療実績で日本一、二を誇る)へ紹介し、安全かつ高度な集約的治療を提供させて頂きます。
逆流性食道炎の主な症状は、のどの異物感・違和感等や、胸からみぞおちにかけてヒリヒリ痛む、いわゆる「胸焼け(むねやけ)」です。特に明け方に多く、中には胸がヒリヒリ痛くて目が覚めると訴える人もいます。
食道と胃の境界は食道―胃接合部とよばれ、括約筋が発達しています。括約筋の機能により、健康な方では胃内容物が食道に逆流しない仕組みになっていますが、高齢者や、腰が曲がってお腹を圧迫しているような方では括約筋機能がうまく働かず、とくに睡眠中に胃液が食道に逆流して、食道炎を起こすとされています。また、胃を手術された人、特に胃の全摘手術を受けた人では括約筋機構が障害され、胃酸の他に胆汁などが逆流して食道粘膜に障害をおこし、逆流性食道炎が起こるとされています。
診断は内視鏡検査を行い、食道―胃接合部付近の食道粘膜に炎症所見がないかを観察します。
逆流性食道炎と診断がつけば、内服薬および食生活習慣の見直しで症状がかなり改善することが多いので、胸焼けなどの症状がある方はぜひ診察時にご相談下さい。
その他の食道の疾患として、憩室、アカラシア、など聞き慣れないものがありますが、いずれも珍しい病気で、実際の診療でも問題となることはあまりありません。