内視鏡的乳頭バルーン拡張術は、総胆管結石の治療法のひとつです。
総胆管に結石ができると、胆汁の流れが悪くなり、「黄疸」・「痛み」・「発熱」といった症状がみられ、胆管炎を起こします。そのままでは胆管炎から敗血症、あるいは膵炎を併発し、さらに重篤な状態になってしまいますので、原因となっている結石を胆管から取り出す必要があります。結石を取り出す治療には、内視鏡を使って行う方法と手術の2種類があります。まずは、体に負担の少ない内視鏡を使った方法が行われることが一般的です。それでは、その方法を具体的に説明していきましょう。
胆汁の出口は、十二指腸側の「ファーター乳頭」というところですが、括約筋という筋肉によって締められていますので、そのままでは結石を取り出すのには無理があります。そこで、乳頭を人工的に拡げて、結石を出しやすくする治療が、「内視鏡的乳頭バルーン拡張術」なのです。まず、内視鏡を口から挿入し、食道、胃を通って十二指腸に進めます。ファーター乳頭が見えた所で内視鏡を通して、バルーン(風船)付きのカテーテルを総胆管に入れて、乳頭部に合わせて風船を拡張します。すると、括約筋が開いて総胆管の出口が解放され、結石を出すことができるようになります。
このあと、バスケットという処置具を使って結石を取り出します。バスケットには回収用のものと破砕用のものとがあり、結石の大きさによって使い分けます。結石が10mm以内なら回収用で、10mmを超えるものは、破砕用のものでいったん砕いて結石を小さくしてから取り出します。また、採石用バルーンという処置具もあり、結石をある程度取り出した後、これを総胆管内で拡張させて総胆管内にある微小結石、泥状物質などを排除するために用います。最後に、総胆管内に結石がないことを確認して、治療が終わります。なお、結石が複数個あり1回の治療で取り出しきれない場合、再び胆汁がうっ滞(胆汁の流れが減少または停止)しないように総胆管内にチューブを置き、そのチューブを鼻から出して固定しておくことになります(経鼻胆管ドレナージといいます)。そして、後日改めて残った結石を取り出します。
治療時間は、だいたい一時間くらいです。場所はレントゲン室で行います。当院では、医師二名、看護師二名、放射線技師一名が連携し、確実で安全な治療を行っております。また、治療中は鎮静薬や鎮痛薬を使用しますので、患者様はほとんど苦痛を感じることなく、治療を受けていただけます。
図:1 十二指腸「ファーター乳頭」 2、胆管造影 3、ガイドワイヤーを挿入
4、バルーン付きカテーテルで乳頭部を拡張 5、バスケットで胆石を摘出
図:治療中のレントゲン画像。胆管内の胆石をバスケットでつかんで摘出しています(→)。白く太い管は内視鏡です。