炎症性腸疾患について
大腸に起こる炎症性疾患の総称を、炎症性腸疾患と言います。病状が悪化すると、粘膜のびらんや潰瘍が生じます。細菌やウイルス感染などの急性のものや、クローン病や潰瘍性大腸炎など原因が特定できない難病などがあります。
潰瘍性大腸炎について
大腸粘膜が炎症を起こし、びらんや潰瘍ができる慢性腸疾患です。主に、腹痛・下痢・粘血便・発熱・体重減少などの症状が現れます。症状のある活動期と、症状がない寛解期を繰り返します。昨今の日本における食生活の欧米化などによって、患者数が多くなっています。特定できる原因が分からないため、厚生労働省より難病指定されている疾患です。一定基準を満たすことで、医療費補助を受けることができます。適切な治療によって、発症前の状態を維持することも可能です。
潰瘍性大腸炎の原因
明確な原因が分かっていませんが、食習慣や遺伝・腸内細菌叢の状態・ストレスなどが重なり合って発症すると言われています。
潰瘍性大腸炎の症状
主に、下痢・腹痛・粘血便・発熱・貧血・体重減少などの症状が現れます。直腸が炎症を起こしていると、常に便意を感じる・残便感があるなどの症状も見られます。治療で症状が改善しても、再度悪化してしまう再燃寛解型・症状が継続する慢性持続型などがあります。このため、治療で症状が解消しても、医師の指示に従って治療を継続することが大切です。
潰瘍性大腸炎の検査・診断
大腸カメラ検査を用いて検査・診断を行います。潰瘍性大腸炎は、直腸炎型・左側大腸炎型・全大腸炎型に分類されます。また、血液検査によって、貧血や炎症の程度・栄養 状態などを確認します。大腸カメラ検査にて、組織の一部を採取して病理検査を行って確定診断となります。潰瘍性大腸炎は、病状が進行すると大腸がんを発症するリスクが高まります。このため、定期的に大腸カメラ検査を受けて、大腸ポリープや大腸がんを早期に発見することが重要です。
潰瘍性大腸炎の治療
適切な治療を地道に継続し、つらい症状がない時期を少しでも長く維持することが大切です。5-アミノサリチル酸製剤を中心に、免疫抑制剤やステロイド薬などを使って治療を行います。そのほか、注腸製剤・坐剤などを用いることもあります。炎症が酷い場合は、ステロイド薬の静脈内投与・生物学的製剤・免疫調節薬などを用いることもあります。さらに、強い炎症が広範囲にある場合は、腸管を安静にするために絶食を行い、中心静脈栄養を行うことがあります。これらの治療を行っても改善できない場合は、大腸の摘出外科手術を検討します。
クローン病について
特に、小腸・大腸に炎症を起こして、びらんや潰瘍が生じる慢性腸疾患です。はっきりとした原因が分かっていないため、厚生労働省によって難病指定されています。小腸・大腸を中心に、消化管全域に炎症を起こします。潰瘍性大腸炎は主に大腸粘膜が炎症するのに対して、クローン病は口から肛門までの消化管全域に炎症を起こします。また、クローン病は、粘膜表層にとどまらず、深い筋層にまで炎症が及びます。
クローン病の原因
明確な原因が分かっていませんが、日本人における食生活の欧米化や遺伝的要因などが原因として挙げられます。特に、動物性脂肪の過剰摂取・腸内細菌叢バランスの乱れ・食物繊維不足などが指摘されています。
クローン病の症状
主に、腹痛や下痢、血便、貧血、発熱、、全身倦怠感、体重減少などの症状が現れます。小腸が炎症を起こしている場合、下痢や血便は現れず、便秘や腸閉塞を起こすため、診断が困難なこともあります。また、直腸や肛門に炎症が起こった場合は、肛門周囲膿瘍や痔ろうなどの肛門疾患を併発することがあります。消化管以外に、皮疹や関節炎が起こることもあります。
クローン病の検査・診断
クローン病は、炎症の起こる部位によって小腸型・大腸型・小腸大腸型に区別されます。大腸カメラ検査によって、粘膜を直接観察します。組織の一部を採取して、病理検査を行って確定診断できます。小腸は大腸カメラ検査では観察できないため、小腸造影検査で確認し、食道・胃・十二指腸は胃カメラ検査で確認します。また、消化管の炎症の度合や貧血の有無を調べるために、血液検査を実施します。
クローン病の治療
薬物療法を行います。潰瘍性大腸炎と同じように、5-アミノサリチル酸製剤をはじめ、免疫調節薬・副腎皮質ステロイド薬などを用います。クローン病は、炎症が消化管の広範囲に起こり、栄養状態が悪化する可能性も高いため、エレンタール(成分栄養剤)を用いて、腸管の栄養状態を改善させます。また、栄養状態が悪い場合は、中心静脈栄養が必要となります。ヒュミラやレミケード・ステラーラなどの生物学的製剤による治療を行うこともあります。小腸が狭窄や瘻孔を起こして、腸閉塞や膿瘍が生じた場合は手術治療を行います。
潰瘍性大腸炎・クローン病の相談
気になる症状がある方は、お気軽に当院までご相談ください。当院では、鎮静剤を用いた大腸カメラ検査を実施しております。潰瘍性大腸炎およびクローン病の確定診断は、大腸カメラを使用することで出来ますので、潰瘍性大腸炎やクローン病などが疑わしい場合など、不安なことがありましたらいつでもご来院ください。
